EtherCAT 伝送規格を使用する利点

EtherCAT 伝送規格を使用する利点

EtherCAT – Ethernet フィールドバス

このセクションでは、EtherCAT (Ethernet for Control Automation Technology) の詳細を紹介します。 以下の情報は、さまざまな言語で提供されている EtherCAT パンフレットにも記載されています。 (EtherCAT パンフレット)

(出典 http://www.ethercat.org/)


通信技術の進歩に伴い, 産業用通信フィールドバス技術は産業用制御システムで広く使用されています。しかしながらイーサネット技術は、さまざまな分野で最も広く使用されている最も先進的で費用対効果の高い通信技術の 1 つになり、それに関連するハードウェアおよびソフトウェア技術も、技術の普及に伴い急速に発展しています。

EtherCAT (Ethernet Control Automation Technology) は、オートメーション (特にマシン オートメーション) で使用するように設計された、イーサネットに基づく産業用通信技術です。EtherCAT は、Ethernet の利点 (汎用性、高速性、低コスト) とともに驚くべき速さで成長しています。EtherCAT は、主に高速なリアルタイム I/O デバイスを接続するために使用されます。

通信レベルの比較:

  • 工場レベル : < 1000ms. (Ethernet – TCP/IP, 等) IPC / サーバー PC / 無線
  • マシン・レベル : < 100ms. (Modbus / CC-Link, 等) HMI / パネル PC
  • ユニット・レベル :< 5ms. (EtherCAT, 等) デジタルIO / アナログ IO / CANOpen インターフェース

EtherCAT プロトコルの概要

EtherCAT はもともとはBeckhoff Automation (ベッコフ オートメーション) によって開発され、ETG (EtherCAT Technology Group) によって保守されているリアルタイム産業用イーサネット技術です。IEC 規格 IEC61158 で開示されている EtherCAT プロトコルはオートメーション技術、テスト、測定におけるハードとソフトのリアルタイム要件、並びに他の多くのアプリケーションに適しています。

EtherCAT 開発中の主な焦点は、短いサイクル時間 (≤ 100 µs)、正確な同期のための低ジッター (≤ 1 µs)、および低いハードウェア コストでした。

OSI ネットワーク・モデルに関して、EtherCAT プロトコル は主にデータリンク層とアプリケーション層で定義されています。EtherType は下図に示すように、標準の EtherCAT パケット (EtherType = 0x88A4) または UDP 形式 (EtherType = 0x0800) に加えて使用できます。

EtherCAT テキストには、主に ECAT ヘッダー (フレーム・ヘッダー) と EtherCAT テレグラムが含まれます。

EtherCAT Network Packet Format
EtherCAT ネットワーク・パケット・フォーマット (出典: http://www.ethercat.org/)

柔軟なトポロジ

ライン、ツリー、スターあるいはディジーチェイン:EtherCAT はほぼすべてのトポロジをサポートし、ケーブル・タイプについて多くの柔軟性を提供します。産業用イーサネット・ケーブルは、100BASE-TX モードで最大 100 m 離れた 2 つのノード間で使用でき、このオプションによりセンサなどのデバイスを1本の線で接続できます。たとえばノード距離が 100m を超える場合には光ファイバー (100BASE-FX など) も使用できます。イーサネットのケーブル配線はEtherCATにそのまま使用できます。

EtherCAT Network Topology, Line, Tree, and Star Topology.
EtherCAT ネットワーク・トポロジ, ライン, ツリー, スター・トポロジ. (出典: http://www.ethercat.org/)

高速性能

EtherCAT のアドレッシング・モードとEC-Slave ハードウェアによって実行されるメモリ制御技術 ”Fieldbus Memory Management unit (FMMU)" により、単一のインターネット・パケットを渡すだけで、バス上のすべての ECAT-Slave からすべてのデータを同期的にやり取りできます。データの種類には、DIO、AIO、サーボモータのポジションなどがあります。下図を参照してください。

EtherCAT: インターネット・パケットとデータ交換 (出典: http://www.ethercat.org/)

EtherCAT スレーブには通常、EtherCAT スレーブ IC(ESC)が搭載されています。FMMU 技術により1000台のI/Oデータのやり取りがわずか30us以内で、100軸のサーボモーターのデータ交換が100us以内で完了することができます。下記表をご参照ください。(ETG のデータにより)

プロセスデータUpdate Time
256点の分散型デジタルI/O11μs
1000点の分散型デジタルI/O30μs
200チャンネルアナログI/O(16ビット)50μs ( =20kHz )
100サーボ軸(1軸あたり8Byte入出力)100μs
1 フィールドバス・マスター・ゲートウェイ (1486バイトの入力データおよび1486バイトの出力データ)150μs
EtherCAT 性能概要 (出典: http://www.ethercat.org/)

軸制御ループのデータ交換速度 100us は、制御帯域幅 10 kHz に相当します。この速度はクローズドループ制御やトルク制御にも十分です。

高精度同期のための分散クロック

フィールドに分散したプロセスに同期動作が必要となるアプリケーションでは高精度な同期が特に重要です。例えば複数のサーボ軸が同期動作を行うようなアプリケーションがこれに当てはまります。

通信エラーが発生するとすぐに品質が低下する完全同期通信方式とは対照的に、分散同期クロック方式は、通信システムのジッターに対して広い許容範囲を備えています。

EtherCAT: Illustration of Distributed Clock
EtherCAT: 分散クロック (DC) イラスト (出典: http://www.ethercat.org/)

EtherCAT の同期メカニズムは、IEEE-1588 Precision Time Protocol に基づいており、その定義をいわゆる分散クロック (DC) に拡張しています。簡単に言うと、すべての EtherCAT ESC はハードウェア・ベースのクロックを維持し、最小時間間隔は 1 ナノ秒 (合計で 64 ビット) です。EC-Slave によって維持される時刻は、ローカル・システム時刻 (Local system time) と呼ばれます。

正確なインターネット時刻同期メカニズムと動的時刻補正メカニズム (*1) により、EtherCAT DC テクノロジは、すべての EC-Slave ローカル・システム時刻の時刻差が +/- 20 ナノ秒以内であることを保証できます。

(*1) EtherCAT standard document ETG1000.4 をご参照ください。

同期性と同時性: 300 ノードと 120 m のケーブルで接続された 2 つの分散デバイスのスコープ ビュー。(出展: http://www.ethercat.org/)

従来のソリューションとEtherCAT ソリューションの比較

自動化技術におけるフィールドバスの使用の人気により、PCベースの制御システムが広く使用されるようになりました。主流のアーキテクチャは主に従来のソリューションとEtherCATソリューションに分けられます。

従来のソリューション:

従来のソリューションでは階層型制御システムを使用します。これは通常、実際の制御タスク、フィールドバスシステム、I / Oシステムのローカル拡張バス、または周辺機器用の単純なローカルデバイスなど、サイクルシステムの複数の補助システムで構成されます。

例えばISAバスは自動化の分野で40年以上使用されいます。8 MHzの伝送速度、多種のソフトウェアソースコード機能、様々なアナログおよびデジタル出力へのアクセスなど複数のプロセスを実行できるため広く使用されています。

EtherCAT

EtherCATソリューションは自動化関連のアプリケーションでの普及が近年進んでいます。マスターデバイスとスレーブデバイス間の接続はネットワークケーブルのみで行うことができ、EtherCATデバイスはインストールの速さ、シンプルな配線、それらによる労力の削減により他の産業用通信規格から際立っています。

Ethernet自体はこれまでと同レベルの技術の進歩を示しており、フィールドバスシステムを一般的に使用するアプリケーションタイプではシステムに優れたリアルタイム機能を持つこと、小さなデータ通信に適応するできること、そして経済的である必要がありました。EtherCATはこれらのリアルタイム自動化技術、テストと測定、その他のさまざまなアプリケーションの要件を満たしています。

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